伝説の漫画・タンク・タンクローの電子化

タンク・タンクローの表紙画像

毎年2月9日は『漫画の日』と言われています。理由は漫画の神様・手塚治虫先生の命日から来ているとされています。

そのままスキャンで電子化する書籍は活字のものが殆どですが、時折、漫画を電子化して欲しいとのお声がけをいただくこともあります。事例紹介記事を公開している株式会社Jコミックテラス様の運営「絶版マンガ図書館Z」用の電子化も、スキャン対象物は絶版された漫画です。

一方で、「貴重書」と呼べるほどの漫画本を非破壊で電子化させていただいたこともございます。

タンク・タンクローについて

その漫画とは、1934年に連載がスタートした阪本牙城先生の作品「タンク・タンクロー」です。

『ドラえもん』の源流

ドラえもんのイメージ

ご存知ない方に内容を説明すると、「タンク・タンクロー」は同名の主人公(ロボット)が活躍するSF作品で、毎回タンクローの身体から飛び出すおもしろ道具やギミックを中心に、トラブルを巻き起こしたり悪人をやっつけたりする・・・というストーリーのギャグ系活劇漫画です。戦前の作品として「のらくろ」と同時代の漫画黎明期の傑作と言われている作品です。

ストーリーを読んでドラえもんをイメージした方も多いかも知れません。それもそのはず、この漫画はドラえもんや鉄腕アトムの源流とも言われているのだとか。本記事のトップにある表紙を見ていただければわかる通り、真ん丸の身体というデフォルメも猫型ロボットの面影がありますね。

タンク・タンクローは1936年にその連載が終了し、作者の阪本先生は戦後水墨画家へと転身しました。しかし「タンク・タンクロー」は後の手塚治虫先生や藤子・F・不二雄先生といった、昭和を代表する漫画家達の源流と言える伝説の漫画です。今日の漫画ブームを考えると、後世への影響力は非常に大きなものがあります。

古本はプレミア化

高額

そんな伝説の作品ですが、とはいえ連載当時大人気だったこともあり、連載終了後や戦後になってからも度々出版はされてきました。最近では2005年にも再販されています。

しかし時間が経つにつれ戦前/後の版にはプレミアがつくようになり、いつしか古本市場では1巻10万円以上で取引されるほどになったそうです(※ご担当者様のお話)。現在週間少年ジャンプ作品の単行本が400円あまりですから、単純計算で250巻分を購入できるだけの価値になります。

ここまで高値になってしまうと内容を閲覧できる人間はごく一部に限られてしまい、折角の戦前のヒット作が忘れ去られてしまうという事態になりかねません。

そんな時、電子書籍を販売するイーブックイニシアティブジャパン様 からそのままスキャンへお声をいただいたのでした。

電子化で蘇るタンクロー

ご依頼を受け、そのままスキャンでは以下のような対応をさせていただきました。

非破壊スキャニング

非破壊スキャナー

当時高値で取引されていたタンクローをより多くの人の手に届けたいと考えた同社様は、タンクローをスキャニングの上電子化し、ご自身のサイトで配信しようと考えられました。

超貴重書籍のため、原本の裁断なんてもってのほかという状況です。そのままスキャンでは業務用の非破壊スキャナーで一ページずつ電子化し、弊社サービスでは標準的な解像度である400dpiで納品させていただきました。標準と言っても、通常300dpiあれば画面で見る分には問題ない画質で、400dpiは一般的にデジタルアーカイブの現場で採用される解像度です。

タンク・タンクローのスキャン画像

▲実際にスキャンしたタンクローの表紙画像。こちらはPNGでアップしているため実際の解像度よりも下がっています。(※著作権者さまの許可をいただいた上で画像を掲載しております。)

画像は圧縮している関係から分かりにくいかも知れませんが、阪本先生の細かいハネ、そのインクの濃淡までハッキリ映るほどの美麗な画質です。本記事最後にリンクのあるeBookJapanにて試し読みで出来ますので、是非拡大して高画質を堪能してみてくださいね。

そのままスキャンではタンクローを全巻電子化させていただき、他にも戦前に出版された貴重な作品をスキャニングさせていただきました。

子供にも読める価格に

電子書籍を読む親子

タンク・タンクローの電子書籍化は話題を呼び、朝日新聞やITメディア ねとらぼ など様々な媒体でニュースとなりました。

現在(2023年12月)タンク・タンクローの電子版はeBookJapanにて一巻500円あまりで購入することが可能です。電子化前の価値を考えれば信じられないほどの低価格ですね。

紙の原本しか残っていなかったものが、電子化によって幅広い層に読んでもらえるようになる。電子化やデジタルアーカイブの大きなメリットを感じられたプロジェクトでした。

※本記事におきましては、タンクロー出版様よりご許可をいただいた上で表紙画像を掲載しました。快くお引き受けいただき、本当にありがとうございました。

【ご紹介】
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