地域活性化とは?政策、ポイント、メリットや事例について解説!

地域活性化とは?

経済・社会そして文化など、住む人の様々な活動を促進しその地域全体の発展を目指す地域活性化。特に2010年代からにわかに聞くようになった言葉ですが、具体的にどのようなことをするのかご存知でしょうか。

少子高齢化や過疎化を受け、地域活性化の必要性は年々高まっています。本稿では、地域活性化の意味やメリット、具体的な活動、そして企業が地域活性化に取り組む意義について解説していきます

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地域活性化とは?

地域活性化とは、ある地域の経済や文化、社会などの活動を促進し、その地域全体の発展を図る取り組みを指します。具体的には、地域の魅力を引き出し、地域の持続的な発展を実現して、住民の生活や地域経済の活発化および安定化を図ることが地域活性化の目的です。

地域活性化が一般的に知られるようになったのは、2014年に当時の第二次安倍内閣が成立・公布した「まち・ひと・しごと創生法」がきっかけです。「まち・ひと・しごと創生法」第一条では、その目的について次のように定められています。

少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくために、まち・ひと・しごと創生(※)に関する施策を総合的かつ計画的に実施する。


・まち…国民一人一人が夢や希望を持ち、潤いのある豊かな生活を安心して営める地域社会の形成
・ひと…地域社会を担う個性豊かで多様な人材の確保
・しごと…地域における魅力ある多様な就業の機会の創出

※参照:まち・ひと・しごと創生法の概要

「まち・ひと・しごと創生法」はその後廃止され、現在は「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」が引き継がれています。このビジョンでは

  • 稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする
  • 地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくる保
  • 結婚・出産・子育ての希望をかなえる
  • ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる

という基本方針が掲げられており、地域活性化とは何なのかを明確に表しているということが出来ます。

地域活性化が叫ばれる社会的背景

近年地域活性化が注目を集めるようになった背景として、「人口減少」と「東京の一極集中」があります。

人口減少

現在日本では少子化と高齢化が社会問題となっており、日本の人口構造は若者が高齢者を支える「ピラミッド型」から若者が少なくなり高齢者が増えている「逆ピラミッド型」へ変化しました。特に、過疎地域における少子高齢化は自治体の死活問題となっています。

若年層や生産年齢層の減少は、そのまま地域の活力が低下に繋がります。これにより、地域経済の停滞や施設の閉鎖、地域社会の衰退といった悪循環に陥ってしまうのです。地域活性化は地方の魅力や資源を活かし、地域の経済や産業を活性化させるため、人口減少の歯止めとして期待されています

東京の一極集中

日本における経済や人口の多くが、東京を中心とした首都圏に集中しています。首都圏には多くの企業が本社や支社を構え、日本だけでなく海外からもヒト・モノ・カネが集まります。これにより、東京都内の経済が活発化し、高い経済成長率や雇用機会が生まれるものの、富が集中することで地方の経済が停滞し、人口減少や過疎化が進行してしまうのです。

地域活性化が実現されれば住人のUターン・Iターンが期待できるほか、東京などの都市と地方との連携・交流を促し、こうした地域間の格差を縮小することにも繋がります

地域活性化をする際のポイント

このように、地域活性化は長らく日本社会を悩ませてきてた社会課題を解決する可能性を持っているのです。

しかしだからといって、闇雲に移住を促進したり地域内で事業を起こせば地域活性化を実現出来る、という訳ではありません。地域活性化を進める上で大切なポイントを解説します。

地域資源の活用

地域活性化においては、その地域の自然環境や文化、歴史などの資源を活用し、地域の魅力を引き出すことが重要です。例えば観光地としての地域資源の活用や地域産業の育成などが挙げられます。

地元住民にとっては当たり前のものが、地域外の人から見れば珍しい・魅力的に見えるということよくあります。そうした地域資源を事業化・商品化し、魅力的な形で地域外へ発信していくことは、地域資源の活用例として一般的な手法です。

地域交流・コミュニティの促進

一方で地域活性化の目的は”お金稼ぎ”ではなく、あくまで地域内の住民が幸せになることです。そのため、地域住民一人ひとりが地域活性化へ自発的に参加し、その中で交流を深めコミュニティを形成することが望まれます

日頃の交流や地域活性化への意識が、課題の発見や地域資源の発掘、目指したい地域のイメージ、そして資源を活用するアイデアといった地域活性化の一連の動きの原動力になるでしょう。

地道なトライ&エラーを繰り返す

地域活性化では、その地域の特性や課題に合わせたアプローチをする必要があります。各種費用や必要な人員、取り組みで目指す具体的な数値目標を最初に決めることはもちろんですが、実施過程で得られる途中経過を鑑み、その都度軌道修正する柔軟さも必要です。

計画を立てて実行し、結果を踏まえて改善点を洗い出したのち、より効果的な取り組みを再度実施する。こうしたトライアンドエラーを繰り返すことで、地域のニーズや課題に適切に対応した持続可能な取り組みを構築することが可能となります。

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地域活性化の事例

地域活性化について理解したところで、具体的に実例を見ていきましょう。

葉っぱビジネス(徳島県上勝町)

葉っぱビジネス」とは、もみじなどを収穫し日本料理の「つま」や食材として販売するという、文字通り「葉っぱ」を販売するビジネスのことです。

徳島県上勝町は山間にある小さな町で、古くから特産品である温州みかんの栽培が町の産業を担ってきました。ところが1980年台に町を襲った異常寒波の影響で大打撃を受け、みかんに代わる農産物を探す必要が出てしまいます。そこで地元の方が目をつけたのが、豊かな山々の木から取れる葉っぱでした。

1986年に葉っぱを「彩(いろどり)」というブランド名で販売。以来30年以上にわたって全国に流通し、様々なシーンで上勝町の葉っぱがつまものとして使われています

「葉っぱ」という、一見どこにでもありそうなものに価値を見出し、地域の産業を支える事業にまで成長させ地元民の生活を豊かにする。地域活性化の理想的なケースと言えますね。

※参照:株式会社いろどり 会社概要

百年の森構想(岡山県英田郡西粟倉村)

西粟倉村は、上勝町同様独自の取り組みで「自分で稼げる自治体」として全国的に注目を集めている市町村です。

百年の森構想」が誕生したのは2008年。当時、県内で財政力が最も低いという評価を受けていた西粟倉村では、市町村合併の話が持ち上がっていました。ところが協議の結果、合併案は否決。独自の方向で村を存続させることになり、目を付けたのが豊かな森林の「木材」でした。

とはいえ、林業で利益を上げるのは非常に難しい時代。一方で西粟倉の森林の大部分は人工林で、そのまま放っておくと土砂災害リスクが懸念される状況にあり、いずれにしても手をかける必要性が生まれていました。そこで西粟倉村が考えたのが、向こう50年後の森林まで見据え、木材としての価値を最大化することを目的に考案した「百年の森構想」、およびその木材を使った第六次産業への参入です。

木材は住宅建設や家具の製造メーカーに、また一般消費者向けには木のおもちゃや家具など、さまざまな商品として加工し販売。現在では全国の家庭や事業所で西粟倉の高品質な木材が広く浸透しており、まさに地域の資源を活用し、住民全体で参加する持続可能な地域活性化に成功した事例と言えます。

これだけでも大成功と言えそうですが、西粟倉では村内で起業する人材を発掘・育成する支援プログラム「西粟倉ローカルベンチャースクール」を2015年に開始。地方の村で起業家を育成するというこれまでに無かったアイデアですが、以降5年間で50社以上の会社がそこから誕生するという驚異的な成果を上げることに成功しました

※参照:ローカルベンチャー協議会 西粟倉村

デジタルアーカイブ(千葉県大網白里市)

デジタルアーカイブは、文化財・美術品・貴重資料その他のデータをデータベースに集約し、WEBサイト等の形式で一般公開するシステムです。

大網白里市では公営の美術館や博物館などの文化施設が存在せず、長い歴史や豊富な貴重資料を有していながら市民が気軽に触れられる機会がありませんでした。そこで同市が2018年に公開したのが、美麗な画像で文化財を閲覧できるデジタルアーカイブの採用です。地方自治体がデジタルアーカイブを公開することは決して珍しくありませんが、施設を持たずオンラインのみで文化財を公開することは極めて稀な例と言えるでしょう。

同アーカイブでは旧石器時代の遺物から近現代の資料まで幅広く公開されており、地域の長い歴史を実資料を見ながら学ぶことが出来ます。また縄文土器など一部の収蔵品に関しては3Dデータで公開されているほか、スマートフォンを持って実際に史跡を巡りながら解説を読むことが出来る「先人往来歴史街道ウォーキングマップ」の導入など、テクノロジーを駆使した様々な文化遺産の体験が出来るよう工夫されています

また、アーカイブ内ではアーカイブ化された資料を使った小学生向けの教育コンテンツも公開。このコンテンツ制作にはクラウドファンディングが行われており、広く市民の巻き込みを促した地域活性化施策と言えます

※参照:大網白里市デジタル博物館

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企業が地域活性化を行うメリットは?

最後に、地域活性化に民間企業が取り組むメリットについて解説します。地域活性化=住民と自治体の取り組みと思われがちですが、上に挙げた3つの事例ではいずれも民間企業のノウハウや技術が大きく寄与しています。

もちろん企業が参画するメリットは、地域活性化事業による売り上げの獲得だけではありません。どのようなメリットが考えられるでしょうか。

ブランド価値の向上

まず第一に挙げられるのは企業ブランドの向上です。企業が地域社会に貢献する取り組みを行うことで、企業の社会的責任感や地域への貢献度が高まり、その結果企業のイメージや信頼度が向上します。一方で地域社会からの支持や評価が得られれば、地域内からも企業への好感度は高まるでしょう。

ブランド価値が向上すれば認知度が高まり、地域の市場でも優位に立てる可能性があります。

イニシャルコストを抑えられる

東京にはヒト・モノ・カネが集まると書きましたが、一方で従業員の給料やオフィスの賃料も高額になりがちです。反面地方ではどちらも安く抑えられるため、東京で事業を始めるよりもコストを抑えることが出来るでしょう。

さらに言えば、最近では様々な地方自治体がサテライトオフィスの展開先として企業誘致に取り組んでおり、拠点を開設した企業には補助金を拠出するところもあります。例えば奈良県奈良市では「サテライトオフィス等設置推進補助金」を提供しており、サテライトオフィス開設に必要な初期費用を最大600万円まで拠出すると発表しています。

※参照:企業立地ガイド(奈良市)

人材獲得

優秀な人材の中には、地方から都市部に就職したものの、何らかの事情でUターンせざるを得なかった方も沢山いらっしゃいます。都市部で採用することも出来ますすが、地域をよく知っている地元出身・在住の人材を登用すれば大きな活躍が期待出来るでしょう。

地域活性化は地域を知ることから

今回は地域活性化について解説しました。

日本は全国的に豊かな自然を持ち、地域によって多様な伝統文化・地域資源が存在します。しかしだからこそ、一口に地域活性化と言っても他の地域との差別化を持たせることは簡単ではありません。

大事なのは「この町には何があるのか?」を知ること。そうして自分たちの地元の「宝」を再認識し、議論とトライアンドエラーを繰り返すことで地元の活性化に近づいていきます。

少子高齢化でますます重要性を増してきた地域活性化、皆さんの地元でもどのような施策が行われているのか、是非調べてみてください。よく知っていたはずの地元について思わぬ新しい発見があるかも知れませんよ。

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