デザイン経営とは?意味、効果、導入方法を紹介!

デザイン経営とは?

デザイン経営」「デザイン思考」という言葉を聞いたことは無いでしょうか。AI、DX(デジタルトランスフォーメーション)、顧客体験の多様化など企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化している昨今、重要視されている経営手法です。

とはいえ「経営をデザインする」と言われてもイメージが難しい方もいらっしゃるかも知れません。今回は、デザイン経営の意味、導入するメリット、導入する場合具体的に何をするのかについて解説していきましょう

デザイン経営とは?

デザイン経営は特許庁が推進している経営手法であり、同庁のホームページでは次のように定義されています。

「デザイン経営」とは、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法です。その本質は、人(ユーザー)を中心に考えることで、根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれない、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出すことです。

参照:特許庁はデザイン経営を推進しています

近い言葉に「デザイン思考」がありますが、これは人(ユーザー)中心の視点を取り入れたアプローチ方法のことです。このデザイン思考を従来の会社経営を取り入れたのが、今回のテーマであるデザイン経営となります。上記特許庁の定義にもある通り、企業の生み出す商品・サービス・組織や顧客体験など企業活動のあらゆる場面にデザイン思考を適用させるということです。

特許庁がデザイン経営を推進している背景には、日本企業のグローバル市場における競争力の低下があります。2018年に特許庁「産業競争⼒とデザインを考える研究会」がリリースした「デザイン経営」宣⾔では、世界の有力企業が戦略の中心として位置付けている手法としてデザイン経営を挙げており、日本企業がこの手法を取り入れていないことが弱みであると提言しています。

その上でデザイン経営を導入すれば、後述する様々なメリットを企業経営にもたらすことが出来ると考えられています。ではデザイン経営のメリットとは何でしょうか。

デザイン経営のメリット・効果

デザイン経営のメリットと効果は大きく「イノベーション」と「ブランディング」だと言われています。順にそれぞれ見ていきましょう。

革新的なアイデア(イノベーション)を生み出せる

デザイン経営の大きなメリットの一つは、革新的なアイデアの創出(イノベーション)です。デザイン経営の基となるデザイン思考は、従来の枠組みにとらわれず、問題解決やイノベーションを促進する手法になります。デザイン経営によって従来のビジネス手法では見逃されがちなニーズや問題に対して、新たな視点からアプローチすることが可能となります。これにより、業界の常識を打ち破るような革新的な製品やサービスの開発が可能になるのです。

「イノベーション」という言葉は、現在「技術革新」と同じ意味として使われるようになっています。しかし元の意味は“発明を実用化し、その結果として社会を変えること”までが含まれており、「技術革新」はその方法の一つに過ぎないことが分かります。アイデアの“実用化”そしてそれを通じて“社会”を変えるという点において、人を中心に考えるデザイン経営は非常に適しているのです。

ブランディングに繋がる

デザイン思考に基づいて開発された製品やサービスは人を中心に考えられており、そのデザイン性や使いやすさ、利用体験の質の高さ、そして企業のや想いといった「価値」を感じられるという点から、顧客に強い印象を与えることが出来ます。このような製品やサービスを提供することは企業のブランドイメージ向上に直結します

まさにそうしたその企業独特の「価値」を顧客が体験出来るために、顧客は競合他社との明確な差異を感じることが出来るのです。そしてそれが市場での競合優位性にも良い影響を及ぼすことになります。

デザイン経営の具体的な方法

とはいえ、いくら理屈で理解出来てもなかなか導入のイメージまではつかないかも知れません。以下でデザイン経営を会社に導入する流れについて解説していきましょう。

「「デザイン経営」宣⾔」では、デザイン経営の具体的な取組について以下の7点が挙げられています。

  1. デザイン責任者の経営チームへの参画
  2. 事業戦略・製品・サービス開発の最上流からデザインが参画
  3. 「デザイン経営」の推進組織の設置
  4. デザイン⼿法による顧客の潜在ニーズの発⾒
  5. アジャイル型開発プロセスの実施
  6. 採⽤および⼈材の育成
  7. デザインの結果指標・プロセス指標の設計を⼯夫

それぞれ、順に解説していきます。

①デザイン責任者の経営チームへの参画

デザイン責任者」とは、最高デザイン責任者(CDO)、最高顧客責任者(CCO)、など、デザインや顧客体験における責任者を指しています。

社内のデザインチームをリードすることも大切な役割ですが、重要なのは「経営チームへの参画」の部分です。つまり企業の戦略を決めるコミュニケーションにデザインの要素を取り入れることが必要となります。

②事業戦略・製品・サービス開発の最上流からデザインが参画

通常、デザイナーが関わるのは具体的な商品のデザインやクリエイティブの作成といった、いわゆる下流部分でのウェイトが大きいとされています。しかしデザイン経営では企業のビジネス目標や市場のニーズを把握する、ブランドイメージの方向性を固めるといった上流部分から参画するという点で、従来のデザイナーの役割とは大きく異なります

「デザイナー」としてではなく「デザイン責任者」として参画するという前項の理由は、ここにあります。

③「デザイン経営」の推進組織の設置

いわゆる特定の部署に限った話ではない、企業戦略に関わる方法のため、社内を横断する形でデザイン経営を推進するチームの設置が求められます。

デザイン経営が注目されている理由は市場での競争優勢性が挙げられていましたが、一方で企業内のコミュニケーションも無視してはいけません。トップダウンで『弊社では今後、デザイン経営を推進していきます』と通達しても理解出来ない従業員が少なからず出てくるでしょう。ここでの「推進組織」は、デザインがビジネスに与える影響やその重要性を周知させるという啓発も行うことになります

④デザイン⼿法による顧客の潜在ニーズの発⾒

顧客を具に観察することで潜在的なニーズを見つけることを指します。具体的には顧客の行動やその傾向を直接観察し、その情報を収集することで顕在化していない顧客のニーズを発見するという動きのことで、デザイン経営を推進する上で重要な作業の一つです。

⑤アジャイル型開発プロセスの実施

ここまででお分かりいただけるように、デザイン経営では社内外を問わずコミュニケーションが重要となります。観察・仮説構築・試作・再仮説構築のサイクルを回すアジャイル型開発を取り入れることで、都度発生するフィードバックや課題の発見/解決をスピード感を伴って行うことが出来るようになります。ウォーターフォール型の場合、プロジェクトの後半に差し掛かるほど修正や仕様の変更は難しくなるため、デザイン経営においてはアジャイル型で進めることが良いとされています。

⑥採⽤および⼈材の育成

デザイン経営は組織横断的に進められる方法なので、一部のデザインに強い者のみが従事する、いわゆる属人化が起こることは好ましくありません。デザインに関する専門知識を持った人材を採用・登用し、継続的にデザイン経営の推進に随時してもらうことが必要です。

同じく、ビジネス人材やIT人材など、従来あまりデザインと関わりを持って来なかった分野の人材に対する育成も重要なミッションになります。③で言及したデザインに関する啓蒙と合わせ、具体的なデザイン手法についても教育を実施するのが望ましいでしょう。

⑦デザインの結果指標・プロセス指標の設計を⼯夫

デザインは一見、その効果を数値化するのが難しい領域です。いわゆる”デザインの良し悪し”は主観的な要素が大きくなりますし、ひとえに『ブランドイメージが良くなった』と言っても何によってそれを判断するのか、指標を定めることは簡単ではありません。

顧客満足度、ブランドの知名度、新製品の開発スピードなど様々な指標を考慮する必要があります。重要なのはそれらを長期的に追うことであり、短期的に結果が出ないからすぐ止めることはなるべく避けた方が良いでしょう。デザインの影響は長期に渡るため、それを踏まえた数値目標を策定しましょう

デザイン経営はでイノベーションを目指そう

デザイン経営は、企業のグローバル競争力を高める上で注目されている経営手法です。「デザインを経営に取り込む」という一見イメージが難しい考え方ですが、分解するとイノベーションや企業価値の向上に至るまでの道のりを言語化したもの、と言うことも出来ます。

デザイン経営は、デザイン責任者が企業戦略の上流から参画するという点で新しい考え方です。一方でデザイナーや推進チームだけが動くものではなく、組織全体に理解を進める必要もあります。しかし組織としてうまくデザイン経営を推進することが出来れば、イノベーションやブランディングの再構築の可能性が高まり、その受益者である顧客や市場の満足度も高めることが出来るでしょう。

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