企業ミュージアムとは?意味や企業側のメリット、実際の博物館を紹介

企業ミュージアムとは?

博物館といえば国や自治体などの公的機関、学校法人のような教育機関が開設するイメージですが、実は近年、営利企業が博物館を開設するようになっています。

企業ミュージアム(企業博物館)と呼ばれるこれら民間の博物館は、文字通り企業の歴史、ビジョンを展示品として一般向けに開設するもので、従来の博物館とは役割が大きく異なります。

今回は、企業ミュージアムをなぜ企業が開設するのか、そのメリットは何なのか、そして実在する企業ミュージアムを紹介していきましょう

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企業ミュージアムとは?

企業ミュージアムは、企業が自社の歴史や製品、技術、文化、価値観などを展示し、一般の人々や顧客に向けて公開する施設です。企業の過去から現在、そして将来へと続くストーリーを伝える場であり、後述するように企業のブランディングや広報活動の一環として位置付けられています。

企業ミュージアムでは、企業の歴史や製品に関する展示物や資料、アーカイブ、模型、写真、映像などを通じて、その企業の成り立ちや成長、革新、社会貢献活動などを紹介しています。また、企業の価値観や経営理念を体現する展示やインタラクティブな体験、イベントなども行われることがあります。

従来の博物館とどう違うの?

冒頭で述べたように、企業ミュージアムは従来の公的機関や教育機関が運営する博物館とは様々な点で異なりますが、最も分かりやすいのは運営の目的でしょう。

国や市町村等で運営される博物館は、教育や文化の普及、歴史や芸術の保存と伝承を主な目的としています。そのため、収益や利益よりも社会的貢献や教育的価値を重視し、一般に非営利的な運営を行います。もちろん収益は博物館の存続にも関わるため決して無視できない要素ですが、あくまで文化施設としての社会的使命を果たすことに重きを置いていると言えるでしょう。

一方企業ミュージアムは、後述するように企業のブランディングや広報活動に貢献することを主な目的としています。そのため、収益や利益を追求することがあり、企業のイメージ向上や顧客との関係強化を重視することが一般的です。

企業がミュージアムを開設する目的・メリット

企業ミュージアムは”施設”なので、建設や運営には多額のリソースが必要です。それでも近年次々と開設されているのは何故でしょうか?

ブランディングとイメージ向上

企業ミュージアムを語る上で切り離せないのがブランディングです。企業ミュージアムではその企業のあゆみ、ビジョンやミッション、製品・サービスの変遷などが展示されますが、これらは企業のブランドイメージに沿った形で展示されます。

企業ミュージアムを訪れた顧客や一般の方々に、企業への信頼性や好感度の向上を引き起こすことが出来るでしょう。結果として企業やその製品のファンになってもらうことも可能で、売り上げの向上も期待が出来ます。

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顧客とのコミュニケーション

企業ミュージアムは、その企業に関する歴史やサービス、ビジョンなどあらゆる情報が体系的に整理されており、こうした環境は時にWEBサイトや営業担当のセールストーク以上に説得力を持ちます

自社の情報や製品に囲まれた空間で顧客とコミュニケーションを行うことで、通常では得られないほど深い理解を、企業やそのサービスに対して持ってくれるでしょう。

社員教育・従業員エンゲージメントの向上

企業ミュージアムの中には、新入社員の研修場所として使われる所もあります。自社の歴史やこれまでのサービス、そしてビジョンやミッションを一般向けに分かりやすく展示している企業ミュージアムは、同じく企業について深く知らない社員向けの研修にも最適です

同様に、在籍している従業員にも好影響をもたらします。先述したように、企業ミュージアムは一般層向けのブランディングに活用され、当然ながら好感度を高める目的が大きくあります。その好感度が『従業員である自分にも向けられている』と感じられることは、従業員の帰属意識を高め、その企業で働いていることを誇りに思えるようになるでしょう

日本の企業ミュージアムの実例

それでは、実際に日本に存在する企業ミュージアムを見ていきましょう。

TDK歴史みらい館(TDK株式会社)

秋田県にかほ市出身の齋藤憲三氏によって1930年代に創業され、現在では日本を代表する電気機器メーカーとなったTDKの企業ミュージアム。2005年の創業70周年を機に開館した「TDK歴史館」がその10年後にフルリニューアルし、現在のTDK歴史みらい館として再オープンしました。

常設展示としてTDKのこれまでの歴史をアイデンティティーでもある”磁性”の解説とともに振り返るコーナーや、懐かしのカセットテープの展示コーナー、現在の成長分野でもあるICTやエネルギー業界における同社の商品など、TDKのあゆみやその製品、そしてビジョンを楽しく学べる魅力的な企業ミュージアムとなっています。

その他、AIを活用した最新テクノロジーである「スマートミラー」や、チームラボ社開発の体験型シアター「インタラクティブ マグネティックフィールド シアター」等、見るだけでなく実際に身体で体験出来る展示も公開されています。

所在地:秋田県にかほ市平沢字画書面15
開館時間:10:00-18:00
入館料:無料
HP:https://www.tdk.com/museum/

TOTOミュージアム(TOTO株式会社)

トイレやお風呂など「水まわり」の製品でおなじみのTOTO。まだ下水道が整備されていない1917年に創業され、以来日本はもちろん全世界において”TOTOブランド”の製品は広く普及し、高く評価されています。

そんなTOTOの企業ミュージアムでは、トイレを中心に「水まわり」の歴史や文化、そしてTOTOが100年以上にわたって作り続けてきた製品が展示されています。トイレと言っても、外見は陶器、中身は複雑な電気製品であるため、ミュージアムでは非常に奥深い世界を除くことが出来ます。

またTOTOや日本ガイシの属する森村グループの製品も展示されており、食器ほか各社の陶器製品も見ることが出来ます。TOTO=水まわりのメーカーというイメージをお持ちの方は新しい発見をたくさん出来るかも知れませんね。

所在地:滋賀県長浜市三和町6-50
開館時間:10:00-17:00
入館料:無料
HP:https://jp.toto.com/knowledge/visit/museum/

ヤンマーミュージアム(ヤンマーホールディングス株式会社)

農業用トラクターや重機で有名なヤンマーの企業ミュージアムは、これまで紹介してきた博物館とは一線を画しています。

ヤンマーミュージアムは自らを“チャレンジ体験ミュージアム”と銘打っており、その名の通り子供が頭と身体を使って色々なアトラクションにチャレンジするという体験型の企業ミュージアム。館内にそびえ立つビルをボルダリングで登る「サステナブルエナジークライミング」や、本物のパワーショベルを操縦出来る「ざくざく!パワーショベルチャレンジ」など、まさに子供がわくわくすること間違いなしの魅力的なアトラクションが目白押しです。

その他、ビオトープの観察会や料理教室など、農業や食と縁の深い企業らしい様々なワークショップも開催されています。もちろん企業ミュージアムなので、ヤンマーの歴史や歴代製品なども学ぶことが可能です。

所在地:滋賀県長浜市三和町6-50
開館時間:10:00-17:30
入館料:900円(一般・個人の場合)
HP:https://www.yanmar.com/jp/museum/

月桂冠大倉記念館(月桂冠株式会社)

日本酒の銘柄として全国的な知名度を誇る京都の老舗企業・月桂冠株式会社の企業ミュージアム。蔵元らしく、明治時代に建造された酒蔵を活用した博物館になっています。企業ミュージアムとしてはやや歴史が長く、創業350周年にあたる1987年に開設されました。2024年2月には新装オープンしています。

 創業はなんと1637年にも遡る同社のこれまでの歴史や、文化財にも指定されている木桶などの酒造用具類といった展示品が、貴重資料と共に陳列されているのが特徴。「きき酒」体験で様々なお酒を楽しめるのは蔵元の企業ミュージアムならではですね。企業ミュージアムとしては決して大きくありませんが、庭園も公開されており、京都の風情を存分に味わえる京都らしい博物館と言えます。

所在地:京都市伏見区南浜町247番地
開館時間:9:30-16:30
入館料:600円(20歳以上の場合)
HP:https://www.gekkeikan.co.jp/enjoy/museum/

企業ミュージアムに行ってみよう

今回は、近年増えている企業ミュージアムについて解説しました。企業が運営する文化施設としては美術館や音楽ホールが有名ですが、近年はそのブランディングへの貢献度が注目を浴びるようになり、企業の文化を反映したユニークさからメディアでも取り上げられるようになりました。

企業のイメージは、テレビCMや日頃使っている商品である程度決まってしまいます。しかし企業ミュージアムに行くことで、それまで抱いていた企業へのイメージを大きく変えることが出来る、または更に好きになることが出来るかも知れません。皆さんもお近くの企業ミュージアムへ足を運んでみてはいかがでしょうか。

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