電子書籍は紙の本に負けるのか?電子化代行が擁護してみた。

2018.02.05

先日紙と電子書籍の関係について調べていたところ、こんな記事を見つけました。

[blogcard url=”https://wired.jp/2011/06/06/%e9%9b%bb%e5%ad%90%e6%9b%b8%e7%b1%8d%e3%81%8c%e7%b4%99%e3%81%ab%e8%b2%a0%e3%81%91%e3%82%8b5%e3%81%a4%e3%81%ae%e3%83%9d%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%88/”]

7年前の記事ではありますが。イノベーション系のニュースを度々取り上げている世界的なビジネス雑誌・Wiredの記者が、ここ最近存在感を増してきた電子書籍が紙に取って代わることはまだ難しいと述べつつ、その理由を5つ列挙しています。

そのままスキャンへ

興味深いのは必ずしも実用的・合理的側面から記述しているだけではなく、ビジネス誌ながら感性的な観点からも考察を行っているところ。すなわち『電子書籍は××が●●%紙に劣っているからダメだ!』と書かれているのではなく、紙に比べるとちょっと寂しい、物足りないとやんわり思われる部分を指摘しているように思えます。さすがWiredさんは視点がイノベーティブ。

結論から言うと、書籍電子化のプロとして全体的な考え方や結論には賛成です。詳しい内容は記事を読んでいただくとして、ここでは電子化に毎日携わっている業者として、また毎日利用する一電子書籍ユーザーとして、記事中で若干ネガティブに捉えられている電子書籍の応援をしたいと思います。

電子版のデメリット/紙のメリットとは

①視覚的な本の存在感

本の山

記事では最初に、電子書籍が実体を持たない為に『読み終わらなければならない』というプレッシャーが弱く、紙の書籍よりも読破に時間がかかってしまうと触れられています。

まず、これに関しては人によるかなという印象です。私も私生活で紙/電子版いずれの書籍を読みますが、電子版の方がビジュアルとしてのボリュームが無い分『まだこんなに残ってるのか…』という、それこそプレッシャーを感じずに済むので紙よりも読みやすいことが多く感じられます。私が読書苦手なだけなのかも知れませんが…

更に言えば、私たちそのままスキャンがサービスとして電子化させていただいている記念誌や膨大な社内報などはそもそも読破するタイプのものではなく、むしろ読破しなければ内容を把握したり目当ての情報を見つけたりする事が出来ない現状を改善する為に、電子書籍としてリボーンさせているんですよね。当該記事ではコンシューマーを前提に話が進んでいるのでこの点指摘しているのは当然だと思いますが、ケースや対象の書籍によってはそれが当てはまらないこともあります。

そもそも紙だからプレッシャー、電子書籍だからライトというのは単に時間の問題かなとも考えています。電子書籍は紙に比べたら何百分の1の歴史しかありませんから(当該記事も2011年ですから今ほどの普及度もありません)、今後当たり前になってくればビジュアルのギャップは意識しなくなるんじゃないでしょうか。ビジュアルという点では、後述の⑤にも関係してきます。

②書籍を一つに纏められない

本棚

電子書籍と言っても取り扱うストアは多岐にわたるため、紙のように一つの本棚に纏めることが出来ない。換言すれば一つのデバイス内にサービスで分かれた別々の本棚を作らざるを得ないということです。

私、電子書籍は一つのサービスしか使っていないので気づきませんでしたが、確かにそうですね。ユーザーがバラバラのストアで購入している場合ディレクトリもバラバラ、アプリもバラバラ、統合することは難しいとされてきました。よって電子書籍のストアは一つに絞るのが良い、という意見もよく聞かれます。

しかしこの不便性については数年前に解決されており、まさに記事中で触れられている『様々なストアの書籍を一つにまとめるアプリ』が登場しています。他の項目全てにも言えることですが将来的に解消されるデメリットと言えるでしょう。

因みに法人が社内利用で使用する場合、イントラや専用のオンラインストレージなど任意の場所に保存できますからこの心配は要りませんね。

③ページに書き込み出来ない

書き込み

恐らくこれが一番のデメリットと言うか、電子版だとやり辛い点でしょうね。

こちらの記事でも紹介していますが、瞬間的に思いついたアイデアや思考のヒントの書き込みに関しては、まだ紙での直感性に追いつけないかなと思います。これについてもアプリで多少改善されている部分はありますし、やがて紙に追いつく時が来るでしょう。が、しばらくは長い間人間の本能的な書き込みに耐えてきた紙に頼るのが正解かも知れません。

ただまた私たちの話になってしまって恐縮ですが、実際に書籍を電子化し現場で日々使うお客様に伺って『データになってから、書き込みを出来なくなったのが残念だ』というお声はあまり聞いたことがありません。書籍にもよりますが実際の所あまり書き込む機会は無いのかも知れません。

④価格感のギャップ

値段に悩む

電子書籍は紙よりもコストを抑えられるはずなのに、何故わずかな価格差しかないのか?

電子版の方が取り扱いや管理が容易であることはそのままスキャンもよく知っています。しかし出版社様からすると、少なくとも書籍販売に関してはまだ『コストが抑えられる』とは言えないようです(※この点については後日紹介しようと思います)。年々拡大しているものの、紙に比べればまだ小さな電子書籍市場。今後の動きに期待ですね。

因みに電子化代行をご利用いただく法人様の場合、スペースの維持費や紙である故の機会損失等を考えると、むしろ紙故のコスト面でのマイナスな要素が多いイメージです。

特に多かったのはコピー用紙の問題。紙の原本しか残っていない資料の場合、内容を閲覧したりお客様へお渡しする際いちいち1ページずつスキャニングしてプリントアウトしなければなりませんでした。そもそもこういったケースの資料は1冊2冊程度しか残っていないため下手に使い回せないからです。一方電子化すれば、PDFデータをコピペしたりメールで抜粋を送れば解決します。場所も取りませんし、今やペーパーレスを全社的に推し進めている会社が少なくない中、大きな費用削減効果があります。

市販されている書籍を個人的に使う訳では無い限り、電子化はむしろ良いことばかりなのです。

⑤インテリアが寂しい

空の棚

しかし、ここばかりは個人も法人も関係ありません(笑)

早い話電子書籍だと飾れないよねということです。ここは書き込み以上に電子版だとどうにもならない点ですね…強いて言えば、部屋に巨大なスクリーンを置いて本棚を映すとか、ホログラムで投影するとか…少し大げさな話ですが。

現在、世界はモノを持たない方向に進歩しています。IoTもそうですがシェアリングエコノミーで一人ひとりが所持する物理的モノの総量は減っていますし、考え方の面でも“ノマド”や“ミニマリスト”といった概念が一般化しつつあります。いつか①~④の課題全てをクリアし、インテリアを含めたモノの価値観が大きく変わり、記事にある『本棚はわれわれの紋章や名刺のようなもので、会話を始めるきっかけにもなる』という考え方そのものが過去のものとなる可能性だってある訳です。

そういえば以前多くの台所で見られた珠のれんも本来は目隠しを目的とした実用性のあるものでしたが、2018年現在では昭和を象徴するインテリア的な意味合いの方が強くなっているように思えます。同じように(違う?)紙の本も本来の役割とインテリア、それぞれ別の筋に分かれていくのではないでしょうか。

まとめ:紙とデータのバランス

バランスの写真

全体的に物理的存在感の点で電子版のデメリットが指摘されている感じですね。記事は紙と電子版、両者を使い続けることが一番いいだろうという言葉で締めています。この記事が公開されてから7年。最後のインテリアはともかく、存在感や機能性の面ではその間大きく改善されてきたと思います。

必要は発明の母、ということで、現在は効率性やコスパの観点、また経年劣化予防の点から主に法人や団体のお客様のご利用が主であるデジタルアーカイブですが、次第にBからCへと電子化が普及し、電子書籍の何となく扱いづらい部分が解決されていくことでしょう。その普及の過程という歴史的な位置にそのままスキャンが深く関われていること、非常に誇りに思います。

【参照記事】
[blogcard url=”https://wired.jp/2011/06/06/%e9%9b%bb%e5%ad%90%e6%9b%b8%e7%b1%8d%e3%81%8c%e7%b4%99%e3%81%ab%e8%b2%a0%e3%81%91%e3%82%8b5%e3%81%a4%e3%81%ae%e3%83%9d%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%88/”]

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