【一目でわかる】オンライン授業で著作物を使えるシーンを解説!

2020.04.21

新型コロナウィルスの影響により、学校や塾での授業がオンラインに切り替わっています。こうしたニーズを受け、文化庁が4/28より改正した著作権法を1年前倒しで施行することになりました。これによってインターネットを介した授業がより充実する形となります。

…というニュースが出ていますが、とは言え著作権法はとてもデリケートな法律。何がセーフで何が違反なのか、そもそも改正前と何がどう変わるのか、いまいち理解できない方も多いのではないでしょうか。

そこで今回、電子化サービス『そのままスキャン』を運営する株式会社誠勝の顧問弁護士・星野宏明先生に分かりやすく解説いただきました。今回の改正について、

  • どんなケースの授業なら著作物を使えるのか?
  • 使っちゃいけないケースは?
  • 今回の改正のポイント、従来との違いは?

といった点を専門家の視点でお話しいただきます。オンライン授業で著作物を使いたい先生や講師の方々は是非ご覧ください

規制緩和の概要

昨今の新型コロナウイルス感染拡大を受け、授業・講義等をオンラインで配信するケースが増えており、改正著作権法35条の授業目的公衆送信補償金制度を利用した著作物のオンライン授業への利用ニーズが高まっています。

改正著作権法35条の授業目的公衆送信補償金制度が令和2年4月28日に施行される見込みとなり、授業教材となる著作物をメール送信で生徒学生らに配信したり、教師の対面に生徒らがいないスタジオ型オンデマンド授業や遠隔地での異時配信オンライン授業等における著作物の教材利用 について、補償金支払いを条件に、著作者の個別の許諾不要で教材利用できるようになります。

これまでとどう違うの?

図にすると以下のようになります。

改正によって使用可能になるケース

従来の著作権法

●OKのケース:他人の著作物を教材として紙にコピーして、児童生徒、学生に配付する

●原則NGのケース:インターネットを経由して著作物を教材として提供するのは、授業目的でも原則不可(対面授業の遠隔地別教室等に同時中継のみ可)

改正法

対面生徒らが不在の

  • スタジオ型授業の異時配信
  • オンデマンド型授業
  • 教材のメール配信
  • 予習復習教材として著作物等の送信

等、遠隔合同同時授業以外でも、補償金支払を条件として、個別の許諾不要で他人の著作物を利用した教材をインターネット経由で送信可能となります(※ただし、著作権者の利益を不当に害するような利用はできません)。

オンライン授業配信利用の条件となる授業目的公衆送信補償金

利用可能なケース

補償金制度の文化庁指定管理機関である授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS=サートラス)に対し、所定の補償金を支払うことが条件となりますが、新型コロナウイルスによる教育現場への影響とオンライン授業の社会的必要性の高まりを受けて、2020年度に限り、この補償金が「無償」とされます

改正著作権法35条は、オンライン授業等で著作物を教材として「無許諾」で利用できますが、「無償」ではなく、補償金支払を条件とする「有償」での教材利用が本来の原則です。ただし、補償金を決定して認可申請するSARTRAS=サートラスは、昨今の新型コロナウイルス感染拡大を受けたオンライン授業の社会的ニーズの高まりという特殊事情を考慮し、制度初年度2020年度に限り、補償金の額を「無償」として、文化庁に認可申請することを決定しました。

したがって、2020年度に限り、補償金の支払なしに無償で、オンライン授業等で著作物を配信利用できるようになります

ただし、補償金の支払いは無償ですが、補償金制度による著作物の教材利用の際にはSARTRAS=サートラスへの事前の登録が必要となります。

※サートラスとは?

SARTRASのシステム

2018年5月に行われた著作権法の改正に伴い、授業目的公衆送信補償金制度が創立され、補償金請求権を行使する管理団体として、「一般社団法人授業目的公衆送信補償金管理協会(SARTRAS=サートラス)」が設立されました。

教育機関においてオンライン授業で著作物を使用する場合、SARTRAS=サートラスに登録・申請を行い補償金を支払う事で、著作物を利用することが可能となります。

利用できる教育機関

法律上の学校の認可状態によって、SARTRAS=サートラスによる著作物の利用の可否が決まっています。

利用できる教育機関

利用できる授業の具体例

  • 講義
  • 実習
  • 演習
  • ゼミ等(名称は問わない)
  • 初等中等教育の特別活動(学級活動・ホームルーム活動、クラブ活動、児童・生徒会活動、学校行事、その他)
  • 部活動
  • 課外補習授業 等

クラス単位や授業単位(大学の大講義室での講義をはじめ、クラスの枠を超えて行われる授業においては、当該授業の受講者数)、履修者等へ配付するのと同じ複製物の授業参観、研究授業の参加者への配付などは、授業に必要な限度で利用可能です。

利用の方法

  • 対面生徒らが不在のスタジオ型授業の異時配信
  • オンデマンド型授業の異時配信
  • 教室内外の生徒への教材のメール配信、オンライン配信
  • 予習復習のための著作物等の送信等
  • 対面生徒らがいる授業での遠隔地教室への同時オンライン授業配信(従来から利用可)

利用が想定される具体例

具体的に想定される著作物利用ケースを状況に合わせてご紹介致します。

利用できる機関

  • 幼稚園
  • 小学校、中学校、高校、大学等の学校

利用できるオンライン授業

  • 講義
  • 実習
  • 演習
  • ゼミ等(名称は問わない)
  • 初等中等教育の学級活動・ホームルーム活動
  • クラブ活動
  • 児童・生徒会活動
  • 学校行事
  • 部活動
  • 課外補習授業等

想定される著作物教材利用方法の例

  1. 教師・講師がいる教室で対面の生徒学生らに授業し、かつ、遠隔地の教室にもオンライン授業として同時配信での著作物教材利用
  2. 前記①の授業を録画しておき、後日、録画データをオンライン配信し、生徒学生らが教室、自宅、自習室等で受講
  3. 教師・講師しかいない(生徒学生不在の)スタジオで講義を収録し、同時配信または録画したデータをオンラインで生徒学生らに配信
  4. コロナ対策で自宅学習となった生徒学生らに対し、自習用教材として、著作物をメール、オンラインで配信して自宅学習を指示
  5. オンライン配信授業の予習復習教材として著作物を配信
  6. 部活動、課外補修として、著作物を教材としてオンライン配信

まとめ

コロナウィルスの影響により急遽推し進められたため、「無償化」と言う情報だけは知っているが、詳しくは知らないままだった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

教育機関の休校の中4月を迎え、オンラインでの授業を行う教員の方が増加されていることかと思います。いつもとは違う環境の中授業を行う上、普段使っている教科書や著作物の取り扱いについて不明点が多く、授業の準備に手間取ってしまっている、と言った方にこちらの記事が少しでも助けになれば幸いです。

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誠勝は、法人顧客の需要に特化した非破壊電子化総合サービス「そのままスキャン」、美大出身のスタッフが大判の絵画作品を大型スキャナーで電子化する「絵画そのままスキャン」などを提供するデジタルアーカイブのスペシャリスト集団です。専門資格を持つスタッフが、これまでに累計600万ページ(2020年3月1日実績)のお客様の貴重な資料を破損・裁断することなく電子化し、その保存・活用をお手伝いしています。

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