デジタルアーカイブって何?

デジタルアーカイブって何?

デジタルアーカイブという言葉を聞いたことがあっても、「アーカイブってなんだか難しそう…」というイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。

でも、実はデジタルアーカイブはごく一部の専門機関に限った話ではなく、今では一般企業も幅広く取り入れ始めているシステムなのです。

今回は、「デジタルアーカイブってそもそも何?」というところから話を始めて、具体的にどんなことができるのか、どういったところで活用されているのかをご説明したいと思います。最後まで読んでいただければ、デジタルアーカイブをきっと身近に感じるようになり、「あれ、じゃあうちのあの資料もデジタルアーカイブにしたら便利かも?」というアイデアが湧くかもしれません。

デジタルアーカイブの歴史(誕生、発展、普及まで)

アーカイブって、あまり日常では使わない言葉ですよね。「アーカイブ(archives)」という言葉は、もともとラテン語の「倉」に由来するもので、辞書をひくと、「古文書や公文書、記録文書の集合、もしくはそうした文書を保管する場所」と解説されています。

その「アーカイブ」に「デジタル」をつけた「デジタルアーカイブ」は、実は日本で生まれた和製英語です。デジタルアーカイブとは、古文書や公文書だけに限らず、出版物、文化財、その他歴史資料等のあらゆる知的資産をデジタル化し、インターネット上で電子情報として共有し利用できる仕組みを指します。

それではまず、このデジタルアーカイブの歴史からお話したいと思います。

誕生 ―概念の構築

世界に公開

1993年にアメリカ合衆国は、全米情報基盤整備(National Information Infrastructure)という施策をスタートしました。これは全米規模でコンピューターネットワークを構築しようというものでした。この施策によって一気にインターネットが普及し、全米にとどまらず世界中で情報が共有されるようになったのです。

それにともない、1995年にブリュッセルで開かれたG7では、世界規模での情報基盤整備が必要であるという認識に基づき「G7電子博物館・美術館構想」が計画されました。この報告書の中には、文化資産の保存に役立つあらゆるデータを集積し、マルチメディア・データバンクを構築する、という理想が語られていました。この概念が、デジタルアーカイブ誕生へとつながっていきます。

「デジタルアーカイブ」という言葉そのものは、1996年に日本で設立された「デジタルアーカイブ推進協議会(JDAA)」の準備会議の中で、当時東京大学教授であった月尾嘉男氏が初めて提案したものだとされています。JDAAでは、有形・無形の文化資産をデジタル情報の形で記録し、その情報をデータベース化して保管し、また情報ネットワークを利用して発信するという構想がまとめられました。

発展 ―公開に向けた取り組み

公開作業

JDAAの発足後、日本でデジタルアーカイブ構築の動きが始まりました。例えば、国立国会図書館は電子図書館である「近代デジタルライブラリー」を2002年に開始し、NHKは2003年に埼玉県川口市にNHKアーカイブスという施設を開館しました。また、2005年には、国立公文書館が「国立公文書館デジタルアーカイブ」の公開を開始しています。

このように膨大な文化資産を所有する機関を中心に、資料のデジタル化が進み、デジタルアーカイブとして一般公開されるようになったのです。

90年代から2000年代にかけては、地方各地の公共図書館や博物館、美術館でもデジタルコンテンツの開発が盛んに行われました。

普及 ―学術から民間へ

広まるデジタルアーカイブ

さらにその後、各機関がそれぞれ制作したデジタルコンテンツを、相互に連携させて公開する様々なポータルサイトが構築されるようになります。これは2008年に国際図書館連盟(IFLA)とオンラインコンピューターライブラリーセンター(OCLC)から発表された「MLA連携」の構想の影響が大きいと言えます。MLA構想とは、美術館・博物館(Museum)、図書館(Library)、文書館(Archives)の頭文字をとったもので、これらの機関が連携して情報を共有しようという考えです。

最近では、このMLAに、大学(University)と産業界(Industry)を加えて、「MALUI連携」という用語も使われるようになりました。ここにきて、デジタルアーカイブは学術世界だけの話ではなくなり、企業の歴史や文化もアーカイブの対象として認識され始めたのです。

企業が自社のデジタルアーカイブを作る重要性については、後ほど詳しく述べます。

デジタルアーカイブの仕組みと機能・メリット

それでは次に、デジタルアーカイブというシステムの仕組みと、デジタルアーカイブにはどんな機能があるのかをご説明します。

デジタルアーカイブってどんなシステム?

疑問を持つ女性

現在、デジタルアーカイブとして公開されているもののほとんどは、SQLによって操作されるリレーショナル・データベースです。

リレーショナル・データベースとは、Excelのような表形式のデータの集合が互いに関連づけられたデータベースのことで、最も普及しているデータベースシステムです。SQLについてここで詳しくは述べませんが、データベース上で指示を出したりデータを定義したりして必要な操作を行うための専門言語だとご理解ください。

データベース環境は、大きく分けてサーバー型とクラウド型があります。

これまではサーバー型が一般的でした。これはデジタルアーカイブを構築しようとしている機関・企業が、サーバーやソフトウェアをすべて購入し、自社内に設置して環境構築を行うというものです。細かい部分まで個別のニーズに合わせたセッティングができるという利点はありましたが、非常にコストがかかるという欠点がありました。

これに対して、最近増えているのがクラウド型のデータベースです。サーバーを構える必要がないため、初期投資や運用コストがサーバー型よりも抑えられるというメリットがあります。このクラウド型の登場により、デジタルアーカイブの導入を積極的に検討する企業が増えてきています。

最後にデジタルアーカイブでどのようなデータが扱えるのか、ですが、言ってしまえばデジタル化できるほぼあらゆる情報です。文字情報はもちろん、画像、映像、音声など、後世に残すべきだと考えられる情報は、すべてデジタルアーカイブの対象となります。

デジタルアーカイブの機能とそのメリット

メリット

それではデジタルアーカイブには、どんな機能があり、どんなメリットがあるのか。一般的に言われているメリットと、それに加えて企業がデジタルアーカイブを持つことのメリットをご説明します。

デジタルアーカイブの対象となるのは、貴重な文化資料です。そうした資料の多くは経年によって劣化していますが、一度デジタル化してしまえばその情報(テキスト、画像、映像)はそれ以上劣化しないことになります。また原資料を取り出す必要がなくなるため、原資料の保存という意味でも効果があります。

そしてデジタル化した情報は、加工・編集が容易になるのもメリットと言えます。原資料では不鮮明だった文字を読みやすくしたり、退色してしまった写真を復元したり、といったことが可能になり、ストレスなく情報を読み取ることができるようになります。また印刷物電子出版ウェブ上での公開など、様々な用途に応じて最適な形式に変換することができます

デジタルアーカイブをオンラインで公開すれば、誰でもどこからでも検索して情報にアクセスできるようになり、資料の活用の幅が大きく広がることになります。

デジタルアーカイブが優れているのがこの検索機能です。Excelのようなソフトでも検索機能はありますが、複数のデータベースをまとめて構築したデジタルアーカイブでは、横断検索といって、一度に様々なデータベースに対して必要な情報を求めることができます。この横断検索機能により、思いもかけない情報を発見することもよくあります。

そして研究施設や公共機関ではなく企業がこのデジタルアーカイブを構築するメリットは、ずばり企業価値のPR、言い換えれば企業のブランディングです。

企業アーカイブの重要性はアメリカではすでに認識されていて、ウォルト・ディズニー、アップル、ナイキ、コカコーラ、リーバイスなど名だたる大企業が自社資料のアーカイブ化に熱心に取り組んでいます。これらの企業CMでしばしば過去の製品CMが使われているのはご存知でしょう。なかにはアーキビストという専門家を雇っている企業もあります。もちろんこれらの企業は、いま現在アーカイブのデジタル化にも着手しています。

充実したデジタルアーカイブを公開することで、その企業が芯の通った経営理念を持ち、長い歴史もあるということのPRになり、それこそが企業に対する信頼感へとつながっていくのです。ですから、自社の倉庫に大事に創業当時の社内誌を保管しておくのではなく、デジタルアーカイブという形でオープンにすることが必要不可欠なのです。

デジタルアーカイブを取り入れている企業・機関

それでは実際にデジタルアーカイブを導入し、大きな効果をあげている企業や機関をいくつかご紹介します。

資生堂企業資料館

資生堂のイメージ

日本でデジタルアーカイブに積極的に取り組んでいる企業として、資生堂が挙げられます。

1872年に創業した資生堂は、企業文化を経営資産と位置づけ、1990年に企業文化部を設置しました。企業文化部は、社の記録をアーカイブとして管理するための部署です。さらに1992年には創業120周年を記念して資生堂企業資料館を開館しました。同館ではなんと約20万点もの資料をアーカイブとして保存していると言います。

その内容は多岐にわたり、ポスターなどの広報資料や商品のパッケージ、そして写真やCM映像などをはじめ、『花椿』というPR誌は創刊号からすべて保存されています。こうした姿勢は、海外にも広く販売展開を行っている資生堂にとっては、国外での信頼度を高めることに役立っています。現在、資生堂は世界120カ国で事業を行っているため、歴史ある企業としてのイメージ作りは非常に重要なのです。

資生堂はアーカイブ資料のデジタル化を進め、社内向けにデジタルアーカイブ「SHISEIDO-HISTORY」を公開しています。このデジタルアーカイブでは、2,000点以上の画像をダウンロードすることができ、社員はその画像を商品開発や社内資料、PR素材などさまざまな用途に自由に使えるということです。これによって、社内でも「資生堂らしさ」のイメージが自然と共有されるようになるのです。

また、資生堂のデジタルアーカイブが社外で活用された好例として、アメリカのマサチューセッツ工科大学での教材利用があります。「資生堂が伝える:20世紀初期の日本の化粧品広告とデザイン」と題して制作された教材には、資生堂の画像データが数百点使用されました。2009年にこの講義内容は大学のサイトで公開され、いまでは世界各地の大学や高校で広く用いられています。

ヤマハ発動機株式会社

ヤマハのイメージ

ヤマハ発動機株式会社(通称ヤマハ)も、アーカイブに対する高い意識をもった企業です。

ヤマハは、「過去・現在・未来」と「コミュニケーション」をキーワードに、ヤマハ製品を紹介する企業ミュージアムを所有しています。ここでは過去に開発したモーターサイクルや自動車の展示を行っています。

そうした実際の展示に加え、ヤマハの過去の発行物やアーカイブ映像をデジタルライブラリーで配信しています。具体的には、創業間もない頃から刊行していた情報誌『ヤマハニュース』、国外の販売会社や代理店に向けて発刊した英語版の『Yamaha News』、ヤマハボートの販売店向けに発刊した情報誌『ヤマハボート/マリンニュース』、また発展途上国の沿岸漁業に携わる人々に手渡していた情報誌『Fishery Journal』など、どれも今となっては手に入らない貴重な資料ばかりです。

やはり資生堂と同様に、ヤマハも自社がたどってきた歴史そのものに価値を見出し、それを未来につなげていこうという活動の一環として、デジタルアーカイブに力を入れているのです。

パナソニック株式会社

パナソニックのイメージ

1918年創業のパナソニック株式会社は、創業100周年をむかえた2018年に、記念事業として100年史の編纂に加え、歴史資料のデジタル化とデジタルアーカイブの構築を行いました

パナソニックの歴史資料とは、創業者松下幸之助の音声や記録映像約7,000本、文書資料や写真アルバム約20,000冊、エポックメーキングな商品約3,000点という具合に、歴史ある企業なだけに膨大な点数に及びました。デジタルアーカイブ構築に向けて、それらの資料を整理、分類し、デジタル化が行われました。データベース化されたパナソニックの企業アーカイブは、社内イントラネットに公開され、社員であれば社内また自宅のパソコンや携帯端末からも参照でき、パナソニックが運営する歴史館の端末からは誰でも一部のデータにアクセスできるようになっています。

アーカイブのメニューは「創業者に学ぶ」「社史を知る」「年表を見る」「資料を探す」「広報誌を読む」「歴史館アーカイブズ」に分類され、キーワード検索も可能になっています。松下幸之助という伝説的な創業者の言葉や思想を、パナソニックが社内教育に活用するとともに、企業のブランディングの点でも重要視していることがわかります。

またデジタルアーカイブのデータを用いて、パナソニックの公式サイトでは「100 YEARS of ‘BETTER’」という100年の企業の歴史を総合的にまとめた専用ページを公開しています。

国立国会図書館

国立国会図書館

最後に民間企業ではありませんが、日本のデジタルアーカイブを常に牽引している国立国会図書館の活動に少しだけ触れておきます。

国立国会図書館は、日本のデジタル情報全体へのナビゲーション総合サイトを構築することを目的に、ポータルサイトPORTA(現在はNDLサーチに名称変更)を開設しました。このポータルサイトには、国立美術館や公共図書館などの組織が次々と参画し、それぞれが構築したデジタルアーカイブをひもづけることで、今では200種類以上のデータベースを一括して横断検索できるようになりました。

これにより任意のキーワード検索で、約7,000万件の文献情報や全国各地の図書館の所蔵状況を調べることが可能だというからすごい話です。これこそデジタルアーカイブのメリットであり、国立国会図書館は海外機関まで含めてさらに連携先を増加していく方針です。

文化財や文化遺産を遺すために

貴重資料のスキャニング

失われゆく文化遺産や文化財を後世に遺すという意味でもデジタルアーカイブは注目されています。デジタルアーカイブの歴史で触れた通り、そもそもこの概念は、有形・無形の文化資産をデジタル情報の形で記録し、その情報をデータベース化して保管するために日本で生まれたものです。

脆弱な美術品や考古資料、退色しやすい古写真などを高精細の画像データとして記録し、無形文化財と言われる音楽や演劇なども音声や映像データとして記録することで、劣化や消失を防ぎ、次世代へ継承することが可能になるのです。また2008年に文化庁が開設したポータルサイト「文化遺産オンライン」のように、文化財のデータが総合的に検索できる仕組みもできています。これによって、文化財情報が広く共有されるようになり、文化財の保存と公開の両立が可能になりました。

身近になってきたデジタルアーカイブ

画面を見る社会人

デジタルアーカイブについて、その歴史とメリット、具体的な導入事例をご説明しました。「デジタルアーカイブ」は、貴重な資料を扱う図書館や美術館だけの特別なシステムだというイメージが強かったかもしれませんが、ご紹介した通り、実は民間企業でも取り入れているところは増えています

一昔前は、デジタルアーカイブのシステム構築のためには、ハードとソフトの両面で環境構築に大きなコストがかかりました。しかし、クラウドサービスといった通信や情報伝達の技術の開発が進み、またデジタルカメラやスキャナなどのデータ化に用いる機材の進化にともない、コストの面で見違えるほどハードルが下がってきました。この流れは今後も加速していくでしょう。

企業のデジタルアーカイブ構築・運営には、企業理念の浸透、社員教育効果、そして企業のブランディングという様々なメリットがあることもご説明した通りです。デジタルアーカイブは自分の会社には無関係な話だと最初から考えず、自分の会社だったらどんな風に活用できるかな、とぜひ想像してみてください。

なお当ブログを運営するそのままスキャンでも、デジタルアーカイブを企画~電子化~システム構築までワンストップで対応するそのままアーカイブを提供しております。今回の記事でデジタルアーカイブの可能性や活用に興味を持った方はお気軽にサービスサイトをご覧ください

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